5月の例会=報告
5月例会
平成26年5月17日(土)
「デジタル化と郷土史」
新潟郷土史研究会会員 齋藤倫示 氏
〈講演要旨〉
デジタル機器を使って郷土史をどのように調べていったらいいのか、どのような使われ方があるのか、幾つかの事例を示しながら話を進めていきたい。
ある旧家で『新潟湊之真景』絵図1枚が見つかった。やや虫食いの部分があったがデジタル化し、虫食いの部分を修復することができた。私が「郷土新潟」54号で発表した『双六で辿る北国街道』は、史料をデジタル化することにより汚れた部分を取り除いて掲載することができた。さらに『越後春日山旧図』や白山神社所蔵『大船絵馬』もデジタル化し、拡大することにより詳細な部分まで読み取ることができるようになった。
商人定宿のとや伝右衛門『引き札』には越後国内の宿駅や名所旧跡、全国各地の地名が数多く記載されているが、地名の読み方がわからない場合など、当該地の資料館に問い合わせ、すぐに回答をもらうことが可能である。また、『東講商人鑑』は全国各地の図書館や大学図書館に所蔵されデジタル化されている例が多いが、早稲田大学附属図書館所蔵の『東講商人鑑』には「明治十三年八月六日午後……新潟開以来大火 五千五百四十四戸」」の書き込みがあった。この書き込みからおそらく『東講商人鑑』のもとの所蔵者は新潟の町民であり、明治十三年の新潟大火後に早稲田大学の蔵書になったのであろう。
長谷川雪旦『北国一覧写』の中に「元町」が記載されているが、この「元町」が今のどこになるのか、デジタル化された古地図や『東講商人鑑』の記事などを検討することによりはっきりさせることができた。さらに新潟県立図書館所蔵・郷土コレクションデジタル資料『近世新潟町屋並図』と川村修就文書『新潟町中地子石高間数家並人別帳』とを見比べながら「片原三之町西方 間口七間三尺 井上屋庄三郎」の屋敷地も知ることができた。
このようにデジタル化により情報の収集や修正、検索、研究、新事実の発見、遠隔地との交流など多くの恩恵を受けることが可能である。それ故新潟市をはじめとした行政、公共機関の積極的なデジタル化の推進を強く願っている。
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