9月2021

9月の例会=報告

9月例会
令和3年9月19日(日)

「郷土のことばを考える 方言でココロ・カラダ・アタマを活性化」
当会会員 大田朋子 氏

<講演要旨>
 「方言とは郷土の宝」と考え、郷土のことばを再発見しながらことばのもつ心理的・身体的な効用を考え、認知症の予防ができるかもしれない方言についてお話しする。
 新潟県の概形を地図に表してみると日本列島に似ている。ことばの東西の分岐を考えるとフォッサマグナにあるのではないか。例えばお正月に食べる丸餅と角餅の分布をみるとフォッサマグナの東は角餅、西は丸餅。その餅を焼き餅にするのは東、煮餅にするのは西、但し新潟の海岸部と佐渡の一部は煮餅。直江津に群馬から嫁いだ女性が正月の餅の食べ方を姑に聞いたら「やかんでにらんだ」と答えた。嫁はヤカンで煮た、この誤解が嫁と姑を接近させたというエピソードが残っている。灯油ポリタンクの色は赤色の東、青色の西。昆布巻は関東の鰊、西日本の鮭の傾向がある。
 ことばのアクセントについてもイス・クツ・ウサギなど東と西ではアクセントの違いがある。例えば「セナカ」のアクセントはセを強調、ナを強調、強調なし、の三つの形があるのは新潟県のみで、フォッサマグナの境にあることで東西の言語の複雑性もみられる。柳田国男は新潟県の複雑性にことばの調査を中断したといわれている。
 方言を使うことで心や身体に効用がみられることがある。介護施設で体操をする際に動作の指示を新潟弁で話したら参加者の関心が強く、身体を動かすことに効果があった(該当ビデオとして新潟医療福祉大学作成のラジオ体操第一を視聴)。その先鞭は東北大地震後に東北弁で流したラジオ体操の有効実証があった。笑いはNK細胞にかかわり、方言を使った子供と高齢者の交流は互いの心を開き、場を和ませる効用があった。
 「たくさんあること」表す方言には、いっぺ、いっぺこと、どっつり、ふっとつなど多々ある。2019年に本県で開催された第34回国民文化祭にいがたは、「文化のT字路~西と東が出会う新潟~」がテーマであったが、その大会に本県の歴史的背景と文化的多様性を念頭に置いた「ふっとつ」の方言が使用された。
 高齢者のなかには、昔の記憶、ふるさとや郷土の話、ふるさとの方言、同級会の話などを何度でも繰り返す傾向もみられるが、話し手に同感、共感することが、本人の記憶を想起させ脳を活性化させるという。方言も一つの医療ツールの役割を果たしていることがある。方言の医療、福祉への活用を検討することなども今後考えていただきたい。アクセントもその地域の言い方を尊重し、方言は古くて恥ずかしいものではなく、人を活性化させるものでもあるという認識が大切なのではないか。皆さんから方言に関する情報をお寄せいただきたい。
(最後にラジオ体操のみんなの体操のビデオを見ながら、参加者は着座で身体をほぐす)