2月2013

新春講演会=報告

新春講演会
平成25年1月13日

「新潟の古写真を読む」
新潟市歴史博物館副館長 伊東祐之氏

〈講演要旨〉
『新潟市史』やみなとぴあ(新潟市歴史博物館)の企画展で用いた古写真は貴重な資料であり、また、好評であった。古写真一枚一枚に意味があり多くの情報を伝えてくれる。
 昭和4年栄小学校の弥彦遠足の写真を見ると、児童は着物で下駄履きであるがいずれも新調したもののようで、当時の学校遠足は「晴れの日」の一大行事であったことがわかる。また、明治41年の大火の前の写真と後の写真とを比べてみると、家並みの状況など、街の変化を具に知ることができる。
 明治期の新潟には、高木・金井・和田・朝倉等々多くの写真家・写真館が存在し、今も八木朋直旧蔵写真、谷安平(笹川勇吉)旧蔵写真など多数の古写真が残されている。写真はいつ、どこで、だれが、何を意図して撮ったものか推理する必要がある。そして様々な視点から推理することによって新に見えてくるものがある。
 今日はすでによく知られている写真を見ながら、写されている物や事柄、景観などを語ってみたい。(以下、次のような古写真を見ながら詳細な説明があった)
 新潟県庁・県庁前の西堀・西堀鍛冶小路付近・道路整備中の古町通新川付近・道路整備の済んだ本町通坂内小路付近・古町通新津屋小路付近・新潟病院・白山神社付近・参道・ひょうたん池・公園入口・宮浦堀・他門川相生橋付近・他門川新津屋小路堀口付近等々
 身近な写真を読むことも大切なことである。例えば私の家にあるアルバムの写真から、昭和35年前後の子供達の様子や新潟地震の時の情景を知ることができる。そして資料は写真だけではない。何を食べ、何をいくらで買ったのか等々、その日その日の日記や家計簿、チラシ、あるいは思い出や聞き取りなど、自分のまわりにある歴史を一人一人が書き留めていくことが重要である。
 「内野の今昔」や「郷土赤塚」には写真解説の詳述があり魅力的な内容になっている。坂井輪や関屋などの公民館活動でも地元の写真を取り入れた充実した本を出版している。新潟郷土史研究会の「郷土新潟」も専門研究者だけではなく、在野の研究や調査を楽しんでいる人々の発表の場としてあった。
 自分の歴史を語ること、自分の語りを人々の前に出していくことが大切である。みなとぴあはそのような活動を支援し、そうした活動を基盤にこれからも事業を展開していきたいと考えている。


講演会終了後、恒例の新年祝賀会が行われました。当会名誉会長の新潟市長篠田昭氏からご多忙の中ご出席いただき、激励のご挨拶をいただきました。

12月の月例会=報告

12月例会
平成24年12月16日

「地図・空間情報で辿る新潟市域の変容」
新潟郷土史研究会会員 村上桂山氏

〈講演要旨〉
1 中央区天明町をフィールドとした「都市の変容」
1900年代:中川堀沿いに農家が点在(「信濃川河川台帳図」1901)。1925年:沼垂の市街地が拡大、万代町通沿いの宅地化がすすむ。古信濃川以西は宅地化されていない(「新潟市図」)。1945年(終戦時):天明町全域が宅地化される(「米軍写真」1947)。1972~2012年の10年ごとの住宅地図から変化を見ていくと、1980年代(昭和末)に入り都市内部に変化が生じ、駐車場・空家・集合住宅が増加し、人口が流出し万代町商店街の寂れていく様子がみてとれる。2010年代には、商店街・商店の衰退が加速、空き屋が増加し、空洞化が進む。

2 新潟地域の地図の紹介:現在から過去に遡ってみていく。
2050年:新潟市の将来の姿、1970-80年:新潟市都市域の拡張、1964年:新潟地震前後、国体・地震に伴う都市内部の変容、1945年:戦争前後戦争に関係する様々な特徴、1925年:新潟の都市計画により骨格形成、1900年:商業活動の姿商業活動が地図に展開される時代、明治から江戸の姿新潟市が信濃川左岸エリアの頃、1845年:幕府領時代の姿、1849年:長岡藩から幕府領への移行時。
新潟市域の変遷を知る絵図・空間情報としては、天領時代の姿を示す絵図(1845)、地租改正新潟区図(1883か)、新発田連隊地図(1894)、商業家明細図(1896~)、河川台帳図(1901)、都市計画基本図(1926)、新潟港図(1930)、宅地分譲図(1935)、昭和16年以降終戦までの地図、米軍写真(1947)、昭和31年都市計画図、昭和31年代以降の航空写真、昭和40年代以降の住宅地図等が基本となる。

3 まとめ
新潟市域には明治以降多様な地図・空間情報が存在し、これらは郷土の姿を知る際に重要な情報を提供してくれる。様々な地図・空間情報の履歴や節目を分類整理することから、地図の位置取りを明らかにすることができる。地図・空間情報は今後GISを手段として多様な情報表現を行う情報の基盤となる。過去の地図・空間情報が系統的に集約・保管がなされていない状況にあり、重要な課題である。